過去最大の引き上げ幅!!
厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は8月1日、最低賃金(時給)を全国加重平均で31円(3.3%)引き上げて961円とする目安をまとめました。物価高により家計の負担が増していることを重くみて、過去最大の引き上げ幅となりました。
最低賃金は毎年改定されますが、各都道府県が地方最低賃金審議会を開いて最低賃金を決め、10月くらいから実施に移ります。
最低賃金は物価上昇もあり、上昇を続けてきましたが、特に最近は政府が旗を振って最低賃金を上げようとしています。日本がデフレから抜け出すには賃金を上げることが重要だということで、2016年以降はコロナ禍でほぼ横ばいとなった20年を除き、毎年3%を超える引き上げが続いています。
それでもほかの先進国と比べると、日本はまだ低いようです。イギリスやフランスは1500円前後になっています。アメリカは各州で決めていますが、ワシントン州は14.49ドルで、今の為替レートでは2000円近い時給になります。日本政府は2025年度にも1000円以上にすることを目指しています。
都市と地方との賃金格差は大きく開いたままです。背景には、日本の人口分布や産業構造があります。
東京の1072円、神奈川の1071円、大阪の1023円の3都府県です。全国の最高水準にあるのがこの3都府県になります。もっとも少ないのは、地図の左下あたりにある沖縄と高知で、ともに850円です。この2県と東京とは222円もの差があります。
実は、中央最低賃金審議会は47都道府県を経済情勢に応じてA、B、C、Dの四つのランクに分けています。経済活動が活発で賃金や物価などが高い地域からA、B、C、Dの順にしています。Aランクは、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の6都府県。Bランクは、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島の11府県。Cランクは北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡の14道県。Dランクは青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の16県です。
Aランクは首都圏の1都3県と愛知、大阪ですから、人口が多くてたくさんの企業のある地域です。産業としては工業とサービス業が中心です。ただ、人々が暮らすには生活費がかかります。地価や物価が高く生活圏が広いためです。一方、働き口は多く、人手が不足していたり企業同士の競争が激しかったりして賃金は高いのが一般的です。住みにくいけれど稼げる地域ということができます。このランクの都府県は900円台後半から1000円台前半に集中しています。
Bランクの府県は大都市周辺に立地しているところが多く、おおむね900円台前半になっています。Cランクの道県は800円台後半が多くなっています。
一方、Dランクの県は、九州(沖縄を含む)、四国、山陰、東北の県で、850~858円に集中しています。人口密度が少なかったり、大きな産業がなかったりするところが目立ちます。農業、漁業、林業などの第1次産業がまだ多かったり高齢者の比率が高かったりする傾向があります。生活費はあまりかからず住みやすいけれどあまり稼げない地域ということができます。
最低賃金を決めるうえで考慮するのは、生活費、賃金水準、使用者の支払い能力の3点ということなので、生活費がかかり、賃金水準が高く、使用者の支払い能力の高いAランクの地域が高くなり、逆のDランクの地域が低くなるのは仕方がないことのようです。
ただ、このランクは実態とずれているように感じるところもあります。たとえば、福岡がCランクに入っていることです。福岡は47都道府県のうち人口密度では7位、県内総生産額では9位ということで、人手は多く大きな企業も多いところです。福岡の最低賃金は900円でCランクの中では高くなっていますが、それでも実態からすると安い印象があります。北海道もCランクですが、北海道は大都市札幌を持ち、人口も総生産額も全国8位の大きな自治体です。北海道はCランクなのに919円でBランクの数県よりも高くなっています。ランク分けは5年ごとに見直すそうなので、近々見直されるのではないでしょうか。